俳句の作り方 牡丹の俳句
火の奥に牡丹崩るるさまを見つ 加藤楸邨かとうしゅうそん
ひのおくに ぼたんくずるる さまをみつ
牡丹が夏の季語。
「ボタン科の落葉低木の花。
中国原産で平安時代初期に薬用植物として渡来し、初めは寺院で栽培された。
花の王・花神・富貴花などの異名を持つ。」
(俳句歳時記 夏 角川書店編)
火の奥に牡丹崩るるさまを見つ
火の奥に牡丹崩るるさまを見つ
句意を申し上げます。
火を見ているのに炎の揺らぎがまるで牡丹が崩れていくようにみえました。
―幻視
鑑賞してみましょう。
焚火の前に座り、炎をただ見つめていました。
そこには形も意味もなく赤い深みがありました。
私はその一点の揺れを追い、変化の兆しを探していました。
像が動き出すのはいつも静かな凝視のときです。
炎の揺れが花びらの崩れに似ているように見えました。
咲ききった牡丹が落ちる時のあの静かに動き。
火は火のまま燃えているのに像だけが花に寄っていきます。
一瞬だけ炎と花の境が曖昧になりました。
燃えているのは牡丹ではないけれど、まるで花がそこにあるようです。
火の深さが牡丹の崩れを呼び寄せたのです。
幻の牡丹はすぐに消え、火はもとの火に戻ります。
幻の花が現れた一瞬を一句に残しました。
火の奥に牡丹崩るるさまを見つ
