俳句の作り方 蛍の俳句
人殺す我かも知らず飛ぶ蛍 前田普羅まえだふら
ひところす われかもしらず とぶほたる
蛍が夏の季語。
「6月の闇夜にすいすい飛んでいる蛍は、美しいばかりでなく神秘的ですらある。
蛍の名所も数多く、宇治の蛍合戦など蛍にまつわる伝説も多い。
古来、蛍狩りの対象になってきたのは源氏螢と平家蛍。
流螢りゅうけいは闇を飛ぶ蛍の光の事。
*源氏蛍の明滅の周期について、気温や時間などで相違はあるが、関東は約4秒
関西は約2秒と、東西で違いがあるとの調査報告がある。」
(俳句歳時記 夏 角川書店編)
人殺す我かも知らず飛ぶ蛍
人殺す我かも知らず飛ぶ蛍
句意を申し上げます。
私は人を殺すかもしれない。
そんな自分を知らずに飛んでいる蛍よ
鑑賞してみましょう。
人を殺すのは、いつも誰か遠い者だと思っていました。
けれども闇に浮かぶ蛍を見ていると、その刃が自分の中に潜んでいる気がします。
光はあまりに弱くあまりに自由です。
そんな蛍を見つめながら自分にも暗いところがあることを静かに感じていました。
蛍はただ命を燃やしているだけなのに、私はそこに「殺す我」を見てしまいます。
罪の意識ではなく、もっと原始の名もない衝動のようなものです。
前田普羅としての私は、自然の光景に自分の暗部が照らされる瞬間を恐れません。
むしろ暗さがあるからこそ、蛍の一粒の光が胸に刺さるのです。
蛍が闇に吸い込まれるとき、私の刃もまた闇の彼方へ行ってしまうように感じます。
「知らず飛ぶ蛍」は私が抱えている暗部の比喩です。
だからこそ、この一句は恐れではなく静かな肯定です。
光と影が同時に胸に宿る一瞬を書き留めました。
人殺す我かも知らず飛ぶ蛍
